RASとは?脳の仕組みから「意識すると見えるようになる」理由を読み解く

RASとは?脳の仕組みから意識すると見えるようになる理由を読み解く

欲しい車が決まった途端、
街でその車ばかり見かけるようになった。

新しい仕事を探し始めたら、
それまで気にしていなかった求人や働き方の記事が急に目につくようになった。

「いつか本を出したい」と思うようになってから、
出版に関する情報や、本を書いている人との出会いが増えた。

こんな経験はないでしょうか。

こうした現象を説明するときによく登場する言葉が、

RAS(ラス)

です。

自己啓発や引き寄せの法則では、

「RASは脳のフィルター」
「夢を書くとRASが必要な情報を探してくれる」

と説明されることもあります。

僕自身も、長いあいだ夢ノートを書いてきた中で、

書いた夢に関係するものが、それまでより目につくようになる

という経験を何度もしてきました。

では、本当にRASが夢の実現の道を探してくれているのでしょうか。

今回は、少しだけ整理してみます。


目次

RASとは?

RAS(網様体賦活系)と注意・覚醒・意識の関係を示した図解

RASは、

Reticular Activating System(網様体賦活系)

の略です。

脳幹に広がる網様体と関係する神経系で、睡眠と覚醒、意識の維持、注意や集中などに関わっています。RASは実際に存在する脳の仕組みですが、脳科学でいうRASを、そのまま「願いに必要な情報だけを選ぶ検索装置」と考えるのは少し単純化しすぎです。

よく、

RAS=脳の検索窓

と説明されます。

これはRASを理解するための比喩としては、とても分かりやすいと思います。

ただし、実際に僕たちが「何に気づくか」には、RASだけではなく、注意、記憶、期待、関心など、さまざまな仕組みが関わっています。

だから、

「意識したものが目につく=すべてRASの働き」

とまでは言えません。

でも、ここで難しい脳科学の話を覚える必要はありません。

日常で必要なことは、もっとシンプルなことです。

人は、すべてを同じようには見ていない。
自分にとって重要になったものほど、気づきやすくなる。

これです。


欲しい車が急に増えたわけではない

たとえば、赤い車を買おうかと考え始めたとします。

すると翌日から、

「あれ? 赤い車ってこんなに走ってた?」

と思うことがあります。

もちろん、一晩で街中の赤い車が増えたわけではありません。

以前からそこにあった。

でも、自分にとって「赤い車」という情報が重要になったことで、気づきやすくなった。

似た現象は「頻度錯覚」と呼ばれることもあり、選択的注意や確証バイアスなどが関係すると説明されています。

これは、夢についても起こります。

「本を書きたい」

と思っていなかった頃には素通りしていた出版の記事が、

「本を書きたい」

と意識した途端に、意味のある情報に変わる。

世界に突然情報が現れたわけではありません。

自分にとって、その情報の意味が変わった。

そこが面白いところです。

夢を書くことで大切なものが明確になり、関連情報に気づき、自分で選んで行動する流れを示した図解

「RASが夢を叶えてくれる」と考えていた

僕は昔、この仕組みをかなりシンプルに理解していました。

夢ノートに夢を書く。

すると、その夢が脳にとって重要になる。

RASが関連する情報を見つけてくれる。

だから、夢が叶いやすくなる。

いわば、

夢ノートに「検索したい未来」を入力しておく

ようなイメージです。

分かりやすいし、実際に自分の経験ともよく合っていました。

夢ノートに書いておけば、必要な情報や関連情報に気付くことも増えました。

けれど、それで全部の夢が叶った訳でもなく。

自分の本当にしたことや使命に気付けたかと言われれば、まだ分かりません。


同じRASなのに、書いてあることが違う

禁書図書館の木製テーブルでRASについて異なる説明をする本を読み比べる、しいとセフィラの物語挿絵

僕は机の上に三冊の本を置いた。

一冊は、脳について書かれた本。
もう一冊は、自己啓発書。
最後の一冊には、大きな文字で、『RASを使えば、夢は叶う』と書かれていた。

セフィラは順番に表紙を眺めた。

「同じRASについて書いてるはずなんだけど」

僕が言うと、彼女は三冊目の本を持ち上げた。

「これもか? ずいぶん都合のよい脳じゃのう」

彼女は本を置き、最初の一冊を開いた。

「こちらで語られておるのは、覚醒や注意に関わる仕組みじゃ」

次に、二冊目。

「こちらでは、“大量の情報から必要なものを選ぶフィルター”として説明されておる」

そして三冊目。

「この本は、そのフィルターが願いまで叶えると書かれておる」

「僕は、この本が自分の言いたいことに一番似ていると思ったんだけど…」

「おぬしの時代では、確かに流行っておるな」

セフィラは、それ以上その本を責めるようなことは言わなかった。

「じゃあ、“RAS”を使えば夢が叶う訳じゃないのかい?」

「便利ではある」

「便利?」

「その言葉で、自分が何を見ておるのか考えられるなら、使えばよい」

一拍置いて、ページを閉じる。

「ただし、その解説が全てと思うでない」

それなら分かる気がした。

セフィラは立ち上がると、そのうちの一冊を持って書架へ向かった。

そして、ほとんど迷うことなく一冊の本を抜き取った。

「これも読んでおけ」

まるで今日、この本を、今日僕に渡すことを決めていたかのように淀みなく。

受け取った本を開く。

この図書館に、いったい何冊の本があるのだろう。

そして彼女は――どれだけの時間、これだけの本と時を過ごしたのだろう。

そんなことを想いながら、僕は彼女から手渡された本をめくる。


夢を書くと、本当に気づくものは変わるのか

僕たちが何に注意を向けるかによって、気づきやすい情報は変わります。。

そして、目標を設定することが注意の維持や課題への取り組みに影響することを示した研究もあります。だから「何を目指しているのか」は、僕たちの日々の注意や行動にまったく関係しないわけではありません。

ただし、

夢ノートに書けばRASが自動的にチャンスを検索する

とまで言える研究があるわけではありません。

ここは分けて考えた方がよいと思います。

でも僕は、それで夢ノートの価値が下がるとは思っていません。

むしろ逆です。

魔法のような説明を外しても、

自分が何を大切にしたいのかを言葉にすることで、日常の中で気づくものが変わることがある。

それだけでも、十分面白いからです。


夢ノートは「RASを操作する道具」でなくていい

夢ノートを書くとき、「RASを起動しよう」と考える必要はありません。

僕自身、そんなことを考えながら毎日書いているわけではありません。

もっと普通でいい。

たとえば、

  • 今、自分は何をしたいのかを書く
  • 書いた夢を、ときどき読み返す
  • 関係しそうな情報に気づいたら、少し調べてみる
  • 「今日できる小さなことはあるかな」と考える

それだけです。

「いつか本を出したい」と書いたからといって、翌日に出版社から連絡が来るわけではありません。

でも、

出版についての記事を読むかもしれない。
文章を書く人の発信が気になるかもしれない。
自分でも少し書いてみようと思うかもしれない。
誰かとの会話の中で、思いがけずヒントを見つけるかもしれない。

そして、

気づく → 選ぶ → 動く

が少しずつ増えていく。

夢を書くことの面白さは、こちらにあるのだと思います。

夢を書くことで大切なものが明確になり、関連情報に気づき、自分で選んで行動する流れを示した図解
夢を書くことは、RASへの「検索命令」ではない。自分にとって大切なものが明確になることで、日常の情報や可能性に気づきやすくなる。

「ネガティブなRAS」も気にしすぎなくていい

反対に、

「ネガティブなことを考えると、RASが悪い情報ばかり集める」

という説明も見かけます。

確かに、不安なことがあると、それに関係する情報ばかり気になることはあります。

でも、

「ネガティブなことを考えてしまった。RASに悪い設定をしてしまった」

と怖がる必要はありません。

人間なのだから、不安になる日もあります。

嫌なことが目につく日だってあります。

そんなときは、

「今、自分は何にばかり意識が向いているんだろう」

と気づければ十分です。

そして必要なら、少しだけ向きを変える。

「今日、うまくいったことは何だった?」
「今できることは何だろう?」
「本当は、どんな一日を過ごしたい?」

そんな問いをノートに書いてみる。

それは脳を無理やり書き換えることではありません。

自分が見ている場所を、少し選び直すことです。


RASと「引き寄せ」は同じもの?

夢を書いたあとに、

・欲しかった情報が見つかった。
・必要な人と出会った。
・偶然、気になっていた話を聞いた。

そんな出来事が重なると、

「引き寄せたのかも」

と思うことがあります。

僕も、そう感じたことは何度もあります。

ただ、それを全部、

「RASが引き寄せを起こした」

と説明する必要はないと思っています。

意識が変わって、以前なら見落としていた情報に気づいたのかもしれない。

気づいたことで行動が変わり、人とのつながりが生まれたのかもしれない。

本当に偶然だったのかもしれない。

それでも、

自分が何を見ようとしているかによって、日常から拾い上げるものが変わる。

この部分は、夢を書くうえで覚えておいて損はありません。


RASを知って、僕が変えたこと

昔の僕は、

夢を書く

RASが検索する

チャンスが見つかる

夢が叶う

くらいに考えていました。

今は、もう少しゆるく捉えています。

夢を書く。

自分にとって大切なものが、少しはっきりする。

すると、今まで流していたものに気づくことがある。

気づいたものの中から、自分で選ぶ。

そして、できることを少しやってみる。

これで十分です。

RASという言葉を知っていてもいい。

知らなくてもいい。

「脳の検索窓」という比喩を使ってもいい。

大切なのは、

自分が毎日、何を見ながら生きたいのか。

そこなのだと思います。


巨大な禁書図書館の書架から迷わず一冊の本を取り出すセフィラを、しいが静かに見つめる物語挿絵

セフィラに勧められた本を読んでいたはずが、気付くと自宅の書斎に戻っていた。

机の上には、いつも書いている夢ノートの新しいページが開かれている。

夢を書くことは、

世界に命令を送ることではない。

RASを操作することでもない。

自分にとって大切なものを、忘れないように言葉にしておくこと。

それだけでも、いつもの一日の中から、

昨日までは見えていなかったものを、

ひとつくらい見つけられるかもしれない。

そして、その小さな気づきが。

次に何を選ぶかを、少しだけ変えてくれることがある。

RASだけで、すべてを説明する必要はない。

それでも、この視点が僕たちの夢に向かう力になるなら。

それで、いいじゃないか。

禁書図書館ノ記録

この記事に登場した少女・セフィラと、「しい」が訪れる禁書図書館。

二人の物語は、Kindleシリーズ『禁書図書館ノ記録』で描かれています。

禁書図書館とは何なのか。

なぜ、しいはそこへ辿り着いたのか。

そして、なぜセフィラは答えを教えようとしないのか。

この記事で描いた出来事は、本編終了後の「続き」ではありません。

全5巻の物語の中に確かに存在していたけれど、本には記されなかった時間。

書かれなかった、もうひとつの記録です。

 

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この記事を書いた人

夢ノートを書き続けて15年以上。書くことと未来の関係を、実践しながら探究しています。「未来を記述し、未来を読解する」をテーマに、SeaCretで日々の実践や気づき、物語を発信しています。

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